働きながら受けれる!看護師の特定行為研修について知るべき6つのこと

看護師の特定行為研修について知るべき5つのこと看護師の特定行為研修について知るべき5つのこと

働きながら受けれる!看護師の特定行為研修について知るべき6つのこと

特定行為研修を修了していると、タイムリーなケアの提供が可能になります。

特定行為研修の概要
(引用:日本看護協会_特定行為研修制度とは

病院の現場では、高度急性期、急性期、回復期、慢性期のいずれにおいても特定行為研修を修了している看護師の力が必要とされています。
在宅医療の現場では訪問看護ステーション、介護施設、診療所のいずれにおいても特定行為研修を修了している看護師の力が必要とされています。

特定行為研修を修了したことは資格にはなりませんが、これだけ多くの活躍の機会があります。

そして、認定看護師や専門看護師を目指す方の多くが一度病院を辞め、休職して取得するのに対し、特定行為研修は働きながら修了することが可能な場合もあります。

看護師キャリアの次のステップを考えている方は是非この記事を一読していただき特定行為研修の概要から詳細まで知っていただきたいです。

特定行為研修を修了するとできるようになることや実際に研修に参加するまでの手続き、費用面、注意する点を1つの記事にまとめました。

この記事が1人でも多くの看護師のキャリアアップにつながれば幸いです。

採用情報

1 特定行為研修とは?

特定行為研修とは、厚生労働省では「看護師が手順書により特定行為を行う場合に特に必要とされる実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能の向上を図るための研修であって、特定行為区分ごとに特定行為研修の基準に適合するものであること。」と定められています。

特定行為研修を修了することで、通常医師に判断や指示を仰いでいたのが、医師の作成する手順書に従って、自己の判断で診療補助を行えるようになります。

看護師がその役割をさらに発揮するために、厚生労働省が指定した機関にて特定行為についての研修を受けることで、活躍する場や業務内容の幅を広げることのできる研修制度です。

1-1 特定看護師ってどんな資格?

法律上、「特定看護師」という資格はありません。

特定行為研修を修了した看護師を「特定看護師」として略称します。

資格としてはありませんが、上述の通り、特定行為研修を受けることにより、医師の判断や指示を待たずに、事前に医師が作成した手順書をもとに個人の判断で特定行為を行うことが可能となります。

そのため、仕事の幅が広がり、どの医療現場でも求められる人材になるといえます。

1-2 特定看護師と専門看護師・認定看護師の違い

特定看護師と似た就業者に専門看護師と認定看護師がいます。特定看護師は資格取得が必要ありませんが、専門看護師と認定看護師は資格取得の必要があります。特定看護師は特定行為研修を修了することで働くことができます。

対して、専門看護師とは、日本看護協会から「複雑で解決困難な看護問題を持つ個人、家族及び集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するための、特定の専門看護分野の知識・技術を深めた専門看護師を社会に送り出すことにより、保健医療福祉の発展に貢献し併せて看護学の向上をはかること」と定められています。

また、認定看護師は、「ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を有する者として、本会の認定を受けた看護師」とされています。

医療チームで看護師がより能力を発揮できるように2015年10月に厚生労働省より「特定行為に係る看護師の研修制度」として創設されました。

特定看護師は、今後の医療現場において、今まで住んでいた家で過ごしたいと在宅医療のニーズが増えている現代社会の中で、より活躍できる人材として期待されています。

※参照
日本看護協会 専門看護師とは
日本看護協会 認定看護師とは
厚生労働省 特定行為に係る看護師の研修制度


2 仕事の内容はどう変わるの?

特定看護師の仕事内容で普通の看護師と大きく違う点は、医師の作成した「手順書」をもとに、個人の判断で「特定行為」を行えることです。

通常の看護師の場合だと、医師からの指示を受けて診療の補助を行わなければなりません。しかし、医師も多忙ですので、看護師は指示を待つだけでは患者さんに対し迅速に対応することができませんでした。

もちろん特定行為を行うことはリスクを招く場合もあるため、「特定行為研修」を修了した者のみが手順書に基づいて特定行為を実施することが可能です。

2-1 手順書とは?

手順書とは医師又は歯科医師が作成する看護師への「指示書」のようなものを指します。

医師は病院等の実際の医療現場で起きることを事前に想定し、指示書を作成しておきます。

そうすることで、看護師が状況に応じてタイムリーに判断し、指示書の内容に沿って特定行為を行うことができます。

厚生労働省では、手順書に関して下記の6項目を含むものと指定しています。

(1)当該手順書に係る特定行為の対象となる患者(以下、「患者の特定」)
(2)看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲(以下、「病状の範囲」)
(3)診療の補助の内容(以下、「診療の補助の内容」)
(4)特定行為を行うときに確認すべき事項(以下、「確認すべき事項」)
(5)医療の安全を確保するために医師または歯科医師との連絡が必要となった場合の連絡体制(以下、「連絡体制」)
(6)特定行為を行った後の医師または歯科医師に対する報告の方法(以下、「報告方法」)

(参照:厚生労働省 特定行為に係る手順書例集

2-2 実際に特定行為を実施するときの流れ 

特定行為研修修了後、手順書に基づき看護師が自身の判断で点滴を実施する場合を例に、想定される看護師の仕事幅の広がりとタイムリーな診療の補助について以下に図示します。
特定行為の実施の流れ
※出典:厚生労働省 特定行為に係る看護師の研修制度について

2-3 特定行為研修修了者の実際の活動事例

ここでは、特定行為研修修了者の実践事例をご紹介します。

この事例に代表されるように、特定行為研修を修了した看護師は、その仕事内容に実践の広がりを見せています。

2-3-1 訪問看護の事例

褥瘡(じょくそう:床ずれなど)の壊死組織の除去等を行うために手順書を整備し、特定行為研修を修了している看護師の判断でタイムリーな処置を行うことができます。

また、脱水から救急搬送となる等、入退院を繰り返していた患者さんに対して、訪問先で状態を把握し、脱水と判断した際は、手順書に基づき輸液を行うことで、入退院の回数を減らすことができるようになります。

2-3-2 救急救命の事例

人工呼吸器の設定変更を行うために手順書を整備し、特定行為研修を修了している看護師の判断で設定変更を行うことができます。

医師との事前の相談と手順書を基に、看護師の判断でタイムリーに設定変更を行うことができるため、人工呼吸器からの早期離脱につながります。


3 特定行為と特定行為区分(38行為21区分)

特定行為の範囲と分類は「地域における医療および介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」において、以下の通り、38行為21区分に明確化しました。

特定行為及び特定行為区分(38行為21区分)

特定行為区分

特定行為

呼吸器(気道確保に係るもの)関連

経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの

位置の調整

呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連

侵襲的陽圧換気の設定の変更

非侵襲的陽圧換気の設定の変更

人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬

の投与量の調整

人工呼吸器からの離脱

呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連

気管カニューレの交換

循環器関連

一時的ペースメーカの操作及び管理

一時的ペースメーカリードの抜去

経皮的心肺補助装置の操作及び管理

大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整

心嚢ドレーン管理関連

心嚢ドレーンの抜去

胸腔ドレーン管理関連

低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及び設

定の変更

胸腔ドレーンの抜去

腹腔ドレーン管理関連 

腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された穿刺針の抜針を含む。)

ろう孔管理関連

胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換

膀胱ろうカテーテルの交換

栄養に係るカテーテル管理

(中心静脈カテーテル管理)関連

中心静脈カテーテルの抜去

栄養に係るカテーテル管理

(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連

末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入

創傷管理関連

褥(じょく)瘡(そう)又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去

創傷に対する陰圧閉鎖療法

創部ドレーン管理関連

創部ドレーンの抜去

動脈血液ガス分析関連

直接動脈穿刺法による採血

橈骨動脈ラインの確保

透析管理関連

急性血液浄化療法における血液透析器又は血液

透析濾過器の操作及び管理

栄養及び水分管理に係る薬

剤投与関連

持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整

脱水症状に対する輸液による補正

感染に係る薬剤投与関連

感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与

血糖コントロールに係る薬剤投与関連

インスリンの投与量の調整

術後疼痛管理関連

硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整

循環動態に係る薬剤投与関連

持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整

持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整

持続点滴中の降圧剤の投与量の調整

持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量

の調整

持続点滴中の利尿剤の投与量の調整

精神及び神経症状に係る薬剤投与関連

抗けいれん剤の臨時の投与

抗精神病薬の臨時の投与

抗不安薬の臨時の投与

皮膚損傷に係る薬剤投与関連

抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整

なお、特定行為はこれまでの看護師の業務範囲に関する法的整理を変更するものではなく、「保健師助産師看護師法」(以下、法と略す)における、診療の補助の範疇に含まれます。手順書は、法第37条の2に規定される医師が看護師の診療の補助を行わせるための事前指示の1つです。


4 特定看護師になるには?

実際に特定看護師になる方法を紹介します。

特定看護師になるためには、まず「特定行為研修」を受ける必要があります。

この特定行為研修は厚生労働省が指定する研修機関で受けることができます。各研修機関によって担当している研修内容が異なっているので、事前に確認してから機関を選択することをおすすめします。(参照:厚生労働省【特定行為に係る看護師の研修制度】指定研修機関等について

特定行為研修 指定研修機関 グラフ
(引用:厚生労働省_特定行為研修を行う指定研修機関の状況

仮に希望の研修内容を扱っている機関が自宅の近くになくても安心してください。

最近では、eラーニング商材により自宅での学習や現在勤務している施設での実習が可能となるケースがあります。

研修を受けることが難しい場合でも、1度研修機関に相談してみてください。


5 研修の費用はどのくらいかかるの?

ここでは特定行為研修の費用について述べます。

eラーニングを活用している指定機関であれば、共通科目でおよそ300,000円~500,000円かかります。これに加えて、自身の習得したい区分別科目によって費用が加算されていきます。

1つの参考事例として、筑波大学附属病院の募集要項から、区分別科目ごとの費用一覧を載せておきます。

コース No
区分別科目:特定行為受講料
(消費税込み)
1呼吸器(気道確保に係るもの)関連38,900円
2呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連82,800円
3呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連32,200円
4循環器関連94,300円
5胸腔ドレーン管理関連56,500円
6腹腔ドレーン管理関連33,200円
7ろう孔管理関連72,900円
8栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル管理)関連43,100円
9栄養に係るカテーテル管理(抹消留置型中心静脈カテーテル管理)関連75,100円
10創傷管理関連148,500円
11創部ドレーン管理関連29,000円
12動脈血液ガス管理関連57,800円
13透析管理関連40,900円
14栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連48,000円
15感染に係る薬剤投与関連58,800円
16血糖コントロールに係る薬剤投与関連45,200円
17術後疼痛管理関連38,200円
18循環動態に係る薬剤投与関連98,500円
19精神及び神経症状に係る薬剤投与関連78,400円

(参照:筑波大学附属病院_看護師特定行為研修に関するご案内_募集要項

5-1 助成金をうまく活用しよう!

特定行為研修を受講する際には2つの助成金が対象となっています。

その2つを紹介していきます。

5-1-1 教育訓練給付制度(一般教育訓練)

特定行為研修が修了した場合、研修生本人が指定機関に支払った教育訓練経費の20%相当額(上限10万円)が給付される制度です。

詳しくは、ハローワークのこちらのページをご覧ください。
厚生労働省:教育訓練給付制度

5-1-2 人材開発支援助成金(旧キャリア形成促進助成金)

事業主等に対して訓練経費や訓練中の賃金の一部を助成する制度です。

詳しくは、厚生労働省のこちらのページをご覧ください。
厚生労働省:人材開発支援助成金

5-2 職場によっては補助してくれる場合も

特定行為研修の費用を職場で補助してくれる場合もあるそうです。

実務に活かせる研修とは言え、個人で負担するにはハードルの高い金額です。職場からの補助金や国からの補助金制度を利用できることは特定看護師を目指す方にとっても、またこれからの医療業界にとっても非常に良いことだと言えます。


6 特定看護師になると給与は増えるの?

特定看護師は、資格を取得するわけではないため、特定行為研修を修了したからといってどこまで給与が上がるかは実は現在のところ不透明です。

ただ、高度な知識や経験が必要となる「特定看護師」は給与が上がる要素を多く持っています。

それは下記のとおりです。

・2025年に団塊の世代が75歳以上になる(医療のニーズがより増える)

・今まで以上に在宅医療が重要になる

・厚生労働省は2025年までに10万人超の特定看護師の養成をする意向である(2018年9月末時点でまだ1,205名)

・仕事の領域が広がることで単純に給与が上がりやすい

・昇格の材料になる

以上の要素から、これからますます特定看護師の需要は高まる傾向にあります。

従って、給与は増えやすいと言えるのではないでしょうか。


7 まとめ 取得は大変だが、業務の幅は広がる特定看護師

特定行為研修を終了した看護師は、2020年10月末時点でまだ2,887名です(参照:厚生労働省_特定行為研修制度に関するトピックス)。看護師キャリアを考えると希少価値があること、1度研修を修了してしまえば、更新手続きが不要であることなど、看護師のキャリアを考えると、目指すメリットは大きいと思います。

また、資格要件が経験年数のみで、認定看護師や専門看護師と違い、働きながら修了終了できるという利点もあります。

ぜひこの記事をきっかけに特定看護師を目指し、特定行為研修を受講してみてください。

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