看護師が造影剤注射の知るべき副作用についてと、対処すべきポイント

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看護師が造影剤注射の知るべき副作用についてと、対処すべきポイント

造影CTや造影MRIは、医師が行う病院、看護師が行う病院など対応方法は様々あります。

厚生労働省医政局長通知(平成14年9月30日付け)にもありますが、「医師又は歯科医師の指示の下に保健師、助産師、看護師及び准看護師(以下「看護師等」という。)が行う静脈注射は、保健師助産師看護師法第5条に規定する診療の補助行為の範疇として取り扱うものとする。」となっています。

看護師が造影剤注入目的に実施することも多くなるうえで造影剤の副作用や手技を覚えることは、業務を行う上で重要になります。特に造影CTにおいては副作用は100人に3人の頻度でおきている、注入中が一番副作用がおこりやすいなど注意すべきポイントはいくつかあります。

造影剤注入前に確認すべき3つの大事な項目や、注入中の観察ポイントがいくつかありますので紹介していきます。皆様の日々の業務の参考になれば幸いです。

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1 造影剤の副作用や対処方法は知っておけば怖いものはない!

造影剤注射を行う上でまず知るべきことは副作用になります。軽微なものがほとんどではありますが、100人に3人程度生じることや、注入中に多いこと、副作用出現時はすぐに処置室に搬送など抑えるポイントがありますので紹介していきます。

1-1 造影剤の副作用は100人に3人がおきる

CT用造影剤は、臓器や病変の状態、血流状態をより鮮明に写し出すためのヨード製剤となります。副作用は100人に3人程度生じるものの、かゆみなどの軽微なものがほとんどです。

症状はかゆみや発疹・発赤、嘔気などが多くありますが、眩暈やしびれ、咽頭浮腫など、重篤な副作用の前兆とみられる症状が現れることもあります。ごくまれですが、免疫系の劇症反応であるアナフィラキシーショックが起きると、呼吸困難や血圧低下で死亡することもあります!花粉症やアトピーなどアレルギー体質の人では副作用が発生しやすいといわれますが、その説を裏付けるデータはいまのところありません。

副作用の発生は防ぎようがなく、迅速に対処できる体制を充実させるしかないのが現状です。<参考:循環器画像技術研究会「造影剤の副作用より」>

1-2 副作用の80%は注入中に生じる

造影剤による副作用は80%が注入中に生じます主な症状は発疹・発赤・かゆみ・吐き気・くしゃみ・嘔吐などが出現します。冷や汗や咽頭浮腫なども生じることもあります。6,000人~9,000人に1人程度、呼吸困難や血圧低下、意識障害や腎不全などの症状をきたす患者様もいます。

一番注意しないといけないのはアナフィラキシーショックになります。顔色や患者の皮膚色、咳や喘鳴などの気道閉塞の症状や、あくびや冷汗など急激な血圧低下に伴う症状がないか注意深く観察する必要があります。特に便意やあくびの症状は急激な血圧低下によりみられることもあるので注意が必要です。

<造影剤注入による副作用> 

軽症重症
発疹・発赤アナフィラキシーショック
かゆみ・腫脹咽頭浮腫
吐き気・嘔吐著明な血圧低下
くしゃみ・めまい痙攣・致死性不整脈

<参考:「ちょっと役立つ造影検査に関する話題」P51~53>

1-3 副作用出現時は冷静に!判断に困れば応援を呼びましょう

多くの症状は経過観察のみで症状の改善がみられますが、見極めが必要なのはアナフィラキシーショックかどうかになります。嘔気嘔吐を訴えたとしても、嘔吐中枢の作用の可能性や、血圧低下によるものかもしれません。明らかに呼吸困難や喘鳴、意識障害など緊急処置を必要とする状態でなければバイタルサインを測定し、その緊急性を判断する必要があります。

バイタルサインに異常が認められなくても症状が出た以上、検査を継続するわけにはいかないため、医師に状態を報告し経過観察の指示や、症状に対する薬剤の指示等をもらいます。すぐに対応しなければいけない場合は、呼吸困難、喘鳴、痙攣、ショック症状を認める場合であり、この場合はまず、院内コールやプロトコールがあれば発令し、人員を集めることが最優先となります。

応援を要請したら、気道確保を行うため、頭部後屈顎先挙上を行い、高濃度酸素(10Lリザーバー)投与や、BVMでの補助換気を行を行います。呼吸停止の場合には、BLSにのっとり、すぐにCPRを開始します。ケース自体は少ないですが不測の事態をイメージすることが重要になります。

<参考「アナフィラキシーガイドライン」P13 >


2 造影剤注入前に看護師がチェックするべき3項目

造影剤注射を行う前に看護師が必ず行うべき3つの項目があります。特に副作用のリスク確認は必ず行うべきことになります。アナフィラキシーショックは原因が不明ではありますが、リスクを下げられることは確立していますので、看護師でのぞける要因は減らすようにするのが大切です。

2-1 検査の必要性や副作用のリスク確認、同意書の回収はマスト事項

造影剤注射を行う際には、院内の説明資料を使って施行前に再確認を行います。その際に必ず書類を確認しつつ、リスクが高い疾患に罹患していないかを確認します。特に喘息の既往をもっている方は2倍以上副作用出現可能性が高まるので、例えチェック項目にあったとしても口頭で確認するようにしましょう。

またアレルギー歴のある方も副作用の出現が2倍以上になるので合わせて確認するように心がけましょう。<参考:「ちょっと役立つ造影検査に関する話題」P10>

2-2 検査前の絶食は確認必須

造影検査を行う前は一食は絶食するようにしています。なぜなら副作用の出現リスクや検査内容によっては支障をきたすためです。

しかし、水分摂取は副作用の出現を下げると言われていますし、吐き気などの副作用を抑止する効果もあるので、合わせて確認するようにしましょう。また意外かもしれませんが、不安感が強いと副作用の出現率が高まります。

いかに検査前の確認と安心感を与えることが重要になります。<参考「公益社団法人 日本診療放射線技師会 CT検査FAQ」P43>

2-3 ルートは20G以下が望ましい

造影剤注入時自体は静脈注射で行うことができますが、副作用出現に補液や薬剤投与の対応が迅速に行えるよう、20G以上の留置針でルート確保が望ましいです。

一般的な造影CT検査であれば22Gあればよいですが、これも副作用出現時のことを考え、やはり20G以上の留置針が望ましいです。また留置針と点滴の接続部はロック付きのものが使用されているかの確認を行うことが必須です。特に入院患者さんであれば変更を忘れていることもあります。ロック付きでないと造影剤注入時の圧力で外れてしまう場合があるので必ず確認しましょう。

著者も造影CTを行う前に一度ロックが付いていないものを利用しかけて、実施前に気付き、難を逃れた経験があります。


3 造影剤検査中に行うべき看護

副作用のリスクヘッジは注入前も大事ですが、副作用の80%は注入中に出現していると言われます。そのため検査中に行うべき看護のポイントは「声掛け」「観察」です。そして刺入部の観察とは検査前後で必ず行うようにしましょう。

3-1 看護師として大事な安心感を与える声掛け

患者さんが初めての検査であれば、副作用等の危険性をこちらが説明しているため、不安を感じる人も多いです。2章で説明した通り、不安感は副作用の出現を増大させ、検査を中断せざるをえなくなる場合もあるため、不安を取り除くよう声がけや、必要時タッチングなどを行います。

検査中は『なにかあれば近くにいるので教えて下さい』程度にして、何気ない会話をしたり造影剤注入中は安心感を与える対応をとるようにしましょう。

3-2 刺入部の確認は必ず行う!

副作用の観察とともに注意しなければならないのが、刺入部の観察になります。造影剤は血管外漏出すると水泡や潰瘍形成、まれにコンパートメント症候群を合併するため、痛みや腫脹がないか観察するようにしましょう。刺入部の痛みが生じた場合は医師に相談するとともに、まずは保冷材などで冷やすようにしましょう。

<参考「公益社団法人 日本診療放射線技師会 CT検査FAQ」P45>

3-3 造影剤注入は必ず熱さは感じるので何度も伝えるようにする!

造影剤が血管内に流れると、造影剤の物理的反応により体が温かくなる感覚を伴うことが多いです。その訴えがあることで血管内にきちんと造影剤が流れているかを確認することができますが、それを知らない患者さんは副作用かもしれないと不安になるため、造影剤の正常の作用であることを伝えることも大切となります。副作用と捉えてしまう方も中にはいるため、声掛けは必要不可欠になります。


4 さいごに

造影剤注射は普段の病棟業務には組み込まれないことが多いです。

しかし、看護師の業務に組み込まれていること、造影剤注射後に病棟に戻ることも多い為抑えるべき業務になります。自身が行うことも少ない為、不安に思う看護師も多いですが、実際副作用の出現は稀です。但し起因が不明であるため、副作用の出現徴候や対処法を知ることがとても大事なことになります。

日々の業務や急に造影剤注射を依頼された場合にも対応できるようになることを願っています。

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