看護師がインシデントを極力減らす方法とは?気をつけるポイントを紹介します

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看護師がインシデントを極力減らす方法とは?気をつけるポイントを紹介します

看護師として働いていると、インシデントを起こしてしまうことも可能性としてあり得ます。あるいは、既に起こしたことがある、という方もいるでしょう。

実際に病院内で引き起こるインシデントは、「普段なら問題なくできていたこと」「ふとした瞬間に起こってしまったこと」の占める割合が大変多いです。看護師も人間ですので、ヒューマンエラーはある程度仕方のない部分はあるでしょう。

しかし、医療現場でのインシデントは取り返しのつかない結果を生むものも少なくなく、常に緊張感が必要になります。

また、どれだけ経験を積んだ看護師であっても自ら引き起こしたインシデントというのは長期的に精神的な傷となることもあり、自責の念で潰れてしまうケースも存在します。

今回の記事では、どうしたらインシデントの発生を未然に防げるのかを発生しやすいシチュエーションと共に説明いたします。

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1. インシデントとは

インシデント(偶発事象)とは、医療行為によって患者さんやご家族に障害もしくは不利益を及ぼさないもので、一歩間違えれば重大な医療事故・医療過誤に至っていた内発的な案件を指します。

インシデント=些細なミスというイメージを持つ人も少なくはありません。しかし、程度が甚だしいインシデントは特に「重大インシデント」と表現されることもあるので注意が必要です。

似たような意味合いとしてヒヤリ・ハットが挙げられますが、これは人間の不注意や誤認・判断ミスといった過ちが事故の要因になる(可能性があった)という状況を指す意味で用いられる場合が多く、インシデントのように実際の案件には至らなかったケースが当てはまります。

アクシデント(医療事故)医療行為によって患者さんやご家族に障害もしくは不利益を及ぼしたものをいいます。

例えば、「患者さんへの与薬ミス」ですが、これが実際に発生したとして患者さんの健康に影響がなければインシデントになり、何らかの不利益を被った場合にはアクシデントとなります。しかし、与薬直前でミスに気づいて止めることができればヒヤリ・ハットという扱いになるでしょう。

医療現場のインシデントには国立大学病院医療安全管理協議会の定めたインシデント影響度分類を用いたレベル付けをします。インシデント・アクシデントは最初は区別が付きづらいですが、インシデントレポートを書くときに迷った場合は次の表を参考にすると良いでしょう。

レベル

傷害の
継続性

傷害の
程度

傷害の内容

インシデント

レベル0

エラーや医薬品・医療用具の不具合が見られたが、
患者さんには実施されなかった

レベル1

なし

患者さんへの実害はなかった
(何らかの影響を与えた可能性は否定できない)

レベル2

一過性

軽度

処置や治療は行わなかった
(患者観察の強化、バイタルサインの軽度変化、
安全確認のための検査などの必要性は生じた)

レベル3a

一過性

中等度

簡単な処置や治療を要した
(消毒、湿布、皮膚の縫合、鎮痛剤の投与など)

アクシデント

レベル3b

一過性

高度

濃厚な処置や治療を要した
(バイタルサインの高度変化、人工呼吸器の装着、
手術、入院日数の延長、外来患者さんの入院、骨折など) 

レベル4a

永続的

軽度~中等度

永続的な障害や後遺症が残ったが、
有意な機能障害や美容上の問題は伴わない

レベル4b

永続的

中等度~高度

永続的な障害や後遺症が残り、
有意な機能障害や美容上の問題は伴う

レベル5

死亡

死亡(原疾患の自然経過によるものを除く)

その他

医療に関する患者さんからの苦情、施設上の問題、
医療機器等の不具合・破損
(重大な結果をもたらす恐れのある場合)、
麻薬・劇薬・毒薬等の紛失


また、インシデントレポートの書き方は別の記事で詳しく説明しているので、一読されることをおすすめします。

インシデント?アクシデント?絶対に迷わない判定方法と迅速な書き方

完璧なヒヤリハットを目指して!ハインリッヒの法則を徹底解説!


2. インシデントの事例

まだ看護師になりたての人にはどんなものがインシデントとして扱われるのか、いまいちイメージがつかないかもしれません。実際に起こるインシデントの大半はちょっとした確認ミスや、思い込み、疲労感から来ることが多いでしょう。

ここでは例として実際に病院内で起こりやすいインシデントを3つご紹介いたします。

2-1. 与薬・点滴に関するインシデント

おそらく看護師の方がインシデントレポートを提出する原因第一位は「与薬・点滴のミス」ではないでしょうか。

入院患者さんの多くは与薬や点滴が必要になり、その種類もタイミングも体重や病状によってすべて異なります。点滴も、同じ薬剤であっても投与速度が異なっていたりとミスが起こりやすい状態であるのは間違いありません。

多くの病院ではダブルチェックの徹底や、バーコードによる管理をしているでしょう。

しかしながら、こうした与薬・点滴のミスはダブルチェックの後、実施直前に多く発生する傾向にあります。

与薬で起きやすいミス

・与薬時間の間違い

・与薬量の間違い

・与薬内容の間違い

・同室の患者さんとの薬取り違え

点滴で起きやすいミス

・滴下速度の間違い

・輸液の間違い

・輸液の順番間違い

・同室の患者さんとの薬取り違え

与薬・点滴に関するインシデントは、発生から少し時間が経ってから発覚することが多いのも特徴の一つです。患者さん自身に区別や注意できる知識が無い分、与薬原則の6Rを徹底して行いましょう

与薬原則の6R
  • 正しい患者 〔 Right patient 〕
      同姓同名、似たような名前の患者さんと間違えないように確認。
  • 正しい薬物 〔 Right drug 〕
    似たような名称、似たような剤形に注意。同じ名称でも濃度のちがう薬物がある。
  • 正しい目的 〔 Right purpose 〕
    何を目的にして、薬の指示が出されているかを理解する。
  • 正しい用量 〔 Right dose 〕
    指示された薬物の単位を確認(g、mg、μg、mL、mEq、U、IUなど)。同じ薬剤でも1錠、1アンプル、1バイアル当たりの薬物量が違うものもある。
  • 正しい方法 〔 Right route 〕
    与薬方法により薬効が異なる。
  • 正しい時間 〔 Right time 〕
    指示どおりの日時・曜日かどうかを確認。

2-2. 患者さんに関するインシデント

看護師の方がどれだけ気をつけていても起きてしまう、患者さんの転倒

医療現場にいない人からは「えっ、不慮の事故じゃないの?」と思われがちですが、入院中に患者が起こした事故(転倒・転落や点滴抜去など)も看護師の確認不足や観察不足などが原因とされ、インシデントとして扱われます。

また、似たようなインシデントとして点滴やカテーテルの事故抜管が挙げられます。

2-3. 医療機器に関するインシデント

医療機器のインシデントとして多く挙げられるのが人工呼吸器に関するものではないでしょうか。医療現場で広く用いられる機材であり、回路リークや接続ミス、抜管などが挙げられます。

また、輸液・シリンジポンプでは設定忘れや電源入れ忘れがよくあるインシデントです。

これらの医療機器にはアラーム設定できるものがあるので、接続ミスや異変時にはアラームが鳴ることで早期に発見できることが多いのですが、それでもインシデント発生はなかなか無くなりません。

厚生労働省は各医療機関から挙げられたインシデントレポートに専門家からのコメントや添削を記載し、重要事例分析結果としてHP上で公開しています。

いずれの事例も身近なものになり、対処方法やレポートのまとめかたについて詳細に記載されていますので、一度確認してみましょう。https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/1/syukei9/4.html


3. インシデントを起こさないための3つの注意点

あまり経験したくないインシデントですが、最小限に減らすためにはどのような点に注意すればよいのでしょうか?

インシデントは、看護疲労が溜まった状況により、判断力の欠如によりインシデントが引き起こされがちです。ここではすぐに始められるインシデントの発生を抑えるポイントについて、3つご紹介します。

・ルーティンワークには注意

・医師からの指示変更には注意

・業務再開時に注意

どれも意識一つで変えられるものばかりですが、とても重要なことなのでぜひ実践してみてください。

3-1. ルーティンワークには注意

日常的に繰り返し行っている業務は無意識の行動を取りやすく、思い込みや確認不足で突発的なミスに繋がりやすくなります。

例えば与薬であれば、「この患者さんはいつもこの薬だから」と注意を怠った結果、本来は飲むべき薬の与薬を忘れてしまったり、逆に追加すべき薬を忘れてしまうというミスが発生します。

このように、看護師のインシデントを大きく占める「点滴・与薬のミス」はルーティンワークの先にあることが多く、ルーティンワークの先にあるインシデントは発生から発見まで、時間を要することもありますので注意が必要です。

多くの医療機関はこうしたルーティンワークにダブルチェック体制を敷いていることが多いので、その際に最低限「患者名・薬剤名称・投与量」を声に出して確認しあうといいでしょう。

3-2. 医師からの指示変更には注意

どれだけ忙しいタイミングであっても医師からの指示が変更された場合は時間を空けずに確認しましょう。

特に突発的なもの・実施時間が決まっているものは確認を怠ると重大インシデントに繋がりかねません。指示変更後・実施直前は必ず確認するように心がけてください。

このとき、自分でカルテを見るだけにとどまるのではなく、他の看護師にも共有しながら確認を行えば全体としてのインシデント発生率を下げることができます。

3-3. 業務再開時に注意

看護師は緊急対応などが多く、処置や業務を中断せざるを得ない場面が多く、緊急対応後、再開時に中断前の状況を正確に思い出せずインシデントにつながりやすいです。。

点滴処置に入ろうとしたらナースコールが鳴った等、一つのことに集中して取り組むことの難しい労働環境にあり、キリのいいところまで待ってもらえないことも、インシデント発生に拍車をかけているでしょう。

業務から離れる前には必ず実施している処置の内容を記録し、どこまで完了しているのかがわかるようにしましょう。

再開時には記録にある作業工程が確実に完了しているのか必ず確認してから続きを実施します。一度離れた際に「ここまでは完了しているから」と間違って記憶していることもあるので注意が必要です。


4. 予防するには過去のインシデント事例の確認が大事

インシデントいうのは、いわばその職場にある落とし穴のようなものです。

「ここに落とし穴がある」と知っている人が穴に落ちないのと同じ様に、インシデントの発生しやすいポイントを抑えておけば未然に防ぐことができます。

現在の職場に入職してから一度でも自発的に過去のインシデントレポートを確認された方はそう多くはないかと思います。

病院や施設内で提出されたインシデントの多くはそのまま格納され、重大なもののみが取り上げられています。

事実、医療現場では患者さんの転倒は勿論、退院時の忘れ物ですらインシデント扱いになることもあり、すべてを取り上げて改善策を練ることは不可能に近いです。

しかし、過去のインシデントレポートを確認することにより、病院や部署の欠けているものや発生傾向が見ますし、インシデントレポートは必ず改善策について記載する必要があるので、それらを確認することはインシデントを未然に防ぐ有効な手立てと言えるでしょう。


5. 細心の注意を払って業務にあたろう

実際に病院内で引き起こるインシデントは、「普段なら問題なくできていたこと」「ふとした瞬間に起こってしまったこと」の占める割合が大変多いです。看護師も人間ですので、ヒューマンエラーはある程度仕方のない部分はあるでしょう。

しかし、医療現場でのインシデントは取り返しのつかない結果を生むものも少なくなく、常に緊張感が必要になります。

アクシデントやインシデントの背景には、本来であれば気づかれるべきだった多くのヒヤリ・ハットが存在します。

どんな状況でヒヤリ・ハットが起こるのか、どうすれば気付けるのかを再確認することで効率よくインシデントを回避することができるでしょう。

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